憂鬱を捨てよ、そして登坂広臣へ

 

2018年11月30日、推しの俳優が事務所を辞めた。

 

推し(以下Aくん)を知ったのは数年前だ。当時家庭の揉め事や大学受験が重なり心が疲弊していた私は某テレビ番組の制作発表記者会見をぼんやり見ていた。Aくんは緊張した面持ちで歴史あるシリーズに出演する重圧、そしてこれからの抱負を語っていた。言ってしまえばなんてことのない言葉。それでも私の頭には電撃が走った。彼がこの番組をやりきるまでは死ねない、と思った。受験もなんとか乗り切り番組が終わった後も彼を追いかけた。主演映画が決まった時は飛び跳ねるほど喜んで、深夜ドラマでとても重要な役をやった時は泣くほど嬉しかった。でもきらきら輝いていたAくんは急に表舞台から姿を消してしまった。

11月26日の正午、所属事務所のモバイルサイトはAくんの情報掲載を11月いっぱいで取りやめると発表した。ネットニュースによると契約終了に伴っての退社。今後の進退は未定。吐き気が止まらなかった。そんな時私の手の中にあったのは開催2日後に迫った登坂広臣さんのソロライブツアー『FULL MOON』のチケットだった。

 

少し前に最近気になっている!と言ったら友人に譲ってもらったもので、正直外出する気分ではなかったけれどせっかく貰ったものだし空席にするのは申し訳ない。気分転換もかねて布団から這い出てさいたまスーパーアリーナに向かった。

 さいたま新都心では多少時間を持て余しコクーンの中にあるベンチに座って目の前にあるアンパンマンのポップコーンマシーンをずっと眺めたりしていたが、さすがにちょっともったいないなと思い会場で謎のガチャを回したり食事コーナーでオムライスとオレンジジュースを買った。オムライスの上にかかっていたトマトソースが美味しかった。会場近くで遊び倒していたら開演時間近くになっていたので慌てて入場する。

 

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 オープニングアクトはTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEだった。Aくんはその昔VBA4を受けていたので「もしAくんがVBA4に受かっていてあの番組に出ていなかったとしてもここでAくんと出会っていたかもしれない」と思い運命を感じた。オタクはすぐ運命を感じる。個人的には『LA FIESTA』が好きでした。かっこいい。

 ライブ本編も最高だった。『INTORO』から『FULL MOON』にかけて登坂さんが登場する演出で鳥肌が立ったし『EGO』でオタクたちの悲鳴によってさいたまスーパーアリーナが揺れたのも面白かった。

 

中でも印象的だったのが『END of LINE』前のMCだ。登坂さんは「辛いことも苦しいこともたくさんあると思うし僕は世界の全てを救えないけど、ここに来てくれて一緒の時間を過ごした皆さんには幸せになってほしい」という趣旨のことを仰っていた。私はこの言葉を聞いて大森靖子氏の『音楽を捨てよ、そして音楽へ』という曲を思い出した。

 


大森靖子「音楽を捨てよ、そして音楽へ」at ARABAKI ROCK FEST.16

 

 この曲の中では「音楽は魔法ではない」という一節が繰り返し歌われる。音楽は魔法みたいに現実を変える能力はない。ライブが終わった後、私たちは現実に帰らなければならない。かぼちゃを馬車にしてくれるわけではないし希死念慮はそのままだしAくんは俳優をやめてしまうかもしれない。現実を変える能力はないくせに「面白いこと 本当のこと 愛しているひと 普通のこと」は「なかったこと」、「言わなくても伝わる」ことにしてしまう。

 しかし大森氏は「音楽は魔法ではない」と歌った後「でも音楽は、」と続ける。そのあとは歌われないがブラスの意味が来ることは予測できる。彼女が音楽は魔法ではないと断じながらも音楽に希望のようなものを感じているし音楽の力を信じているのは確かだ。だからこそこの曲の題名は『音楽を捨てよ、そして音楽へ』なのだろう。

同様に登坂さんも「世界を救えない」と言いながら彼自身や彼が所属している三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマンスを見ることで私たちに「幸せになってほしい」と言う。音楽は魔法だ、音楽で世界を救えるといってしまうのは簡単だ。しかし彼はそう言わない。でも自分の音楽の限界を知っていてもなお自分(たち)の音楽でライブに来てくれた人々を幸せにできると信じている。

 

このMCの後に歌った『END of LINE』は”終わり”の歌だ。彼はファンに向かって「自分はアーティストとしていつか活動を終える」と言っていた。一見すると厳しい言葉だが悲しいことにそれは事実だ。人間は老いる。不慮のことがあるかもしれない。またライブ中盤のアコースティックパートでも彼自身のアーティスト人生の転機を言葉をその都度探しながら私たちに伝えようとしてくれる。”終わり”を「なかったこと」にせず、考えていることを「言わなくても伝わる」とはせずに私たちに伝えてくれようとする姿勢はとても真摯で素敵だった。

 

”終わり”を受け入れるのは難しい。特にめちゃくちゃ好きなものが終わってしまう現実に対して「今までありがとう!表舞台に立たなくなっても好きです!応援してます!」とすぐには絶対に言えない。今これを書いているつい1日前にAくんが担当していた雑誌の連載がサイレント終了していることが判明したのだが全く受け入れられていない。せめて最終回は最終回って雑誌のTwitterアカウントとかで伝えて欲しかったと暴れまわっている。

それでも私たちに対して真摯に向き合ってくれているアーティストに「幸せになってほしい」と言われてしまったら私も彼に対して真摯でいたい。せめて現実に帰っても幸せでいたい。少なくともこのライブを見ていた2時間半、とても幸せだった。登坂さん本当にありがとうございました。感謝してもし切れません。

 

長々と書いたが一言で言えばマジでマジでマジでサイコ〜〜〜!!!なライブだった。私はファンクラブに加入したし4月から始まる三代目のライブのチケットもご用意された。Aくんは事務所を辞めて12月に新しくインスタを開設したものの2019年2月現在更新されていない。でもまだ彼の演技は見ることができる機会はある。すごい。生殺しだ。

 

そんな個人的に思い出深い埼玉公演が収録されている『FULL MOON』のBlu-ray及びDVDが2月27日に発売した。限定版にはフレグランスが付いてきた。なんで?

 

books.rakuten.co.jp

勝手に三代目J SOUL BROTHERS楽曲大賞

 半年前、三代目 J SOUL BROTHERS(以下三代目)にハマった。こういったメインカルチャーにハマるのは10年ぶりぐらいでなんなら最近真面目にJ-POPを聞いていない。とりあえずapple musicに入ってる曲をおおむね聞いた上で好きな曲をズブの素人が勝手にレビューしていきたい。

 以降は女王蜂や神聖かまってちゃん大森靖子が好きな私の超個人的な意見ということを念頭に置いてほしい。あと推しメンは岩田剛典さんと登坂広臣さんです。

 

R.Y.U.S.E.I.

 そりゃ売れるなあ。イントロで一旦あげて置いてAメロで溜めてBメロで徐々にパーカスで盛り上げつつサビで爆発という構成がそりゃ売れるなあ、という感じ。聞いててテンションが否応無くあがる。歌詞とかつい最近初めてちゃんと見たんですけど

七つの流星絡み合いながら進む

混じり合って一つになる

 のところとか「メンバー七人、七つの流星、そういうこと!?」となって気絶しました。この曲で人生一度きりのDREAMを掴んだのだと思うとその文脈でもこの曲はアツいです。

O.R.I.O.N.

 曲全体を通してウワモノが綺麗。同じ王道のEDMでも前述の『R.Y.U.S.E.I.』が夏の曲ならちゃんとこの曲は冬の曲という感じの澄んだシンセ。同じこと2回言うけど全体的に綺麗。大サビ前の「ずっと共に」のところとか高音が綺麗すぎませんか?そして大サビの主線を歌っている後ろのコーラスがめちゃくちゃ綺麗じゃないですか?曲の終わり方も澄んだ星空!キラキラ!って感じでめちゃくちゃ良い。

 そしてこの曲は歌詞が個人的に三代目の中では一番好きだ。冬の情景を歌う際に

ソーダ水の泡のような瞬きが空焦がした

とか、

ベルの音響く季節は 白く染めた キャンディみたいな

という言葉のチョイスがメロディの綺麗さにとても合致していてキラキラの相乗効果を生んでいると思う。また聞き終わった後に冬の星座だからだろうけどなんでオリオン座をチョイスしたんだろうと考えて「メンバー七人、オリオン座は星が七つ、そういうこと!?」となって気絶しました。この曲がメンバー七人のことを歌っていると気づいた上で再び聞くとなんかもう七人で銀河でもなんでも飛び越えていってほしい、あなたたちならきっと出来るよ、と感じた。

 

S.A.K.U.R.A.

 桜を歌うとなると旅立ちとか卒業ソング的になりがちだと思うが、この曲は散っていく桜の切なさ/刹那さをこっちの方面でフォーカスするのか!?という面で聞いていて楽しい。普段がこういったストリート系?HIP HOP系?を聞かないので新鮮でもある。

 

Summer Madness feat. Afrojack

 最近サビに歌詞がない曲は体感として流行っている気がするがこの曲はそれの走りだと思っている。初めてテレビで聞いた時に「サビで歌うのを放棄している……(放棄ではない)」と驚いた記憶がある。否が応でも耳に残るシンセのリフをサビで繰り返してボーカルを主線ではなくコーラスとすることで印象に残すのはCMソングとして正解だしマジで否が応でも耳に残るのはすごい。あとこの曲のPVの岩田さんがめちゃくちゃ顔が良くて(常に顔は良いが)見ると爆笑してしまう。

 

Feel So Alive

 この曲を聞いた後、「メロディとか曲全体の構成とかは良いんだけどさ〜〜歌詞がさ〜〜〜〜」としばらくのたうち回ったぐらいの怪作。緩急の付け方も上手いし曲の終わり方も余韻を残す形でとても良い。リズムも乗りやすいしライブでやったらとても盛り上がることが簡単に想像できる。PVも和とストリートが混じった世界観でかっこいいしパフォーマーのソロも見応えがある。健二郎さんが北斗の拳みたいなフェイスマスクをしていたのがめちゃくちゃウケたがそれすらも世界観の補強になっていて死角がない。やはりこの曲のネックになるのは

イキイキ Feel So Alive

この歌詞に尽きるだろう。「イキイキ」の4文字が強烈にダサい。「Feel So Alive」という文字列と「イキイキ」という小学生の学級通信で使われるような文字列の食い合わせが非常に悪い。しかし最初はマジでダセエな、と思っていたのがリピート再生5回目ぐらいで味があるよね、となり30回目ぐらいで「Feel So Alive」の前に4文字入れるとしたら「イキイキ」しかない、と思うようになった。

 この曲中で「イキイキ」はフックとなっている。これが何か別の口当たりの良い4文字だったら『Feel So Alive』はすごいかっこいい曲だよねという感想は生まれるがそのまま喉を通ってしまい後には何も残らない可能性がある。音楽にとって”口当たりの良さ”は諸刃の剣だ。万人に受けるが没個性になってしまう危険性もある。しかしここで口当たりの悪い「イキイキ」の4文字を入れることで人々の心になんだこの曲は!?というしこりが残る。そしてちょっともう1回聞いてみようという気持ちを起こさせる。そして聴けば聴くほどここのリズムがいいとかここのラップがいいとかこの曲の様々な良さに気づくことができる。以上のことから「Feel So Alive」の前に何か4文字入れるとしたら「イキイキ」しかないのである。マジ これ love。

 

Eeny,meeny,mine,moe!

 曲ももちろんながらPVが名作。三代目しかりLDH系のアーティストはダンスを売りにしている。一方でオタクという生き物はスタンドマイクパフォーマンスが大好きだ。激しいダンスとスタンドマイクは相性が悪いように思われる。しかしスタンドマイクパフォーマンスを求めるオタクの需要はこの曲によって満たされるのである。一種の社会福祉。公共事業なのかもしれない。スタンドマイクを使いながらもダンスでしっかり魅せ(しかもスーツ)、ボーカル二人もセクシーに歌い上げている。しかもスタンドマイクを使うだけじゃなく顔の横で手がセクシーに沿うやつ(正式名称がわからない)をやるのだ。オタクが好きなやつがこれでもかと盛られていてマジですごい。後普通に個人的なアレなんですけど登坂さんの前髪下ろしたビジュアルがめちゃくちゃ好きなのでそれでも卒倒しました。このPVの企画案を出した人はノーベル賞国民栄誉賞を同時に獲れます。

youtu.be

 

RAINBOW

 実はこの曲で三代目にハマった。future bassとJ-POPの融合のさせ方が上手すぎる。イントロからAメロ、Bメロで溜めに溜めてサビのシンセで爆発させる構成はベタだけどいいよなあ、となるしリバーブのかかり方が曲全体の幻想的な感じを引き出している。権力に弱いので海外のアーティストの楽曲提供にも弱い。Yellow Clawすごい。

 歌詞も「メンバー七人、虹は七色、そういうこと!?」となって気絶しました。7という数字って色々なところに出てくるんですね。この先も七人でずっと同じ虹を追いかけていって欲しい、という祈りにも似た気持ちが生まれた。

 

Over & Over

 聞いた後に隆二さんのソロ曲だと知ってなるほどな、となった。アルバムの中で『Dream Girl』と並んで異色な曲だと思ったので。もともと福山雅治の『化身』が好きなのでサックスとかを使われるとそれだけど好きになってしまう。隆二さんの歌い方と声質はセクシーな曲との親和性が良いなと気づいた。

 

Dream Girl

 先ほど「隆二さんの歌い方と声質はセクシーな曲との親和性が良い」と書いたが登坂さんも親和性が高かった。途中のサンプリングされてる女性の声が可愛い。今まで三代目といえば『R.Y.U.S.E.I.』とか『Summer Madness』の印象が強かったのでこういう曲も歌うことに驚いたしなんなら二人の歌声の良さは『Over & Over』やこの曲の方が映えると思った。

 

J.S.B. LOVE

 『J.S.B.』の3曲の中で1番好き。この曲はすごい口当たりが悪いのでリピート再生したくなる。毎回大サビ最後の「J.S.B. LOVE」と叫ぶところで高音やべえし1日1回までしか歌ってはいけないってドクターストップかかりそうだなと思う。『J.S.B. LOVE』という題名ながらも単純なラブソングではなくこういった曲調を選び、LOVEとHATEが裏と表だと言いそれでも愛を歌うしかないと謳うのは「LOVE」を冠する曲にふさわしいと感じる。

 

FUTURE

 BloodPop(R)すげ〜〜。良いヘッドホンで聴くと色々な音があってそれだけで楽しい。歌詞もサビの部分は

I SEE YOU I SEE ME

IN MY FUTURE MACHINE

しか言ってないし大体曲を通して同じ歌詞を繰り返しているが全部英語なのでボーカルも楽器のひとつとして認識して聞いてるので気にならない。なんなら心地いい。同じメロディでも少しづつ変えていて4分弱聞いていても飽きない。なんと言われようともやはり海外の最新の音楽シーンを走ってるアーティストは凄いよ。

 

 とりあえず以上だ。他にも書きたい曲はたくさんあるので気が向いたらボーカルふたりのソロ曲とかHONEST BOYZ(R)の曲とかPKCZの曲とかについて書きたい。

 3月の『Yes we are』をめちゃくちゃ楽しみにしてます。